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トウモロコシで泣いた話

甘いものが好きですが、甘すぎないスイーツも好きです。

 

 

時々思い出す、苦いけどありがたい思い出があります。

 

昔むかし。母親以上に年齢の離れた先生について、教室の指導の仕方を教わっていたことがありました。

それはそれは可愛がってもらって、教室の生徒さんからも仲良し親子のように見られていたと思います。

指導者仲間から

「あの人は、ちょっと気を付けたほうがいいよ」

と言われたこともあったけど、自分は大丈夫と思いこんでいました。

 

 

が、それはある日やってきました。

私の何かが癇に障ったのでしょう。

突然始まった、笑顔の無視。

生徒さんには分からないような絶妙な無視でした(笑)。

教室の新しいメニューを教えてもらえない。

今までの会話がない。

人前で話しかければ返事をする。

私と先生にしか分からないような明らかな空気の変化でした。

 

 

その先生も何かを守りたかったのだろうと思います。

いろんな感情が渦巻いての無視だったのだろう、

自分にも非があったのだろう、

と理解しています。

 

 

でも、その頃、まだ若かった私は

もうどうしたらいいのか分からなくて

とにかく泣きそうな気持ちを

生徒さんに知られないようにするのに精いっぱいでした。

 

 

 

 

そんなある日。

私が教室を終えて1人でいたところに

ある生徒さんがこっそりやってきました。

そして、ビニール袋に入った茹でたトウモロコシを

「ほら、しまって」

と言って渡してくれたんです。

生徒さんと言っても、その生徒さんも母親以上の年齢の離れた人で。

日頃から、信頼できると思っていた人でした。

 

 

その人はきっと、その絶妙な無視に気が付いていたんでしょう。

そして、泣き出しそうな私の気持ちにも気が付いていたのでしょう。

 

 

そのさりげない気遣いがとにかくありがたくてありがたくて。

泣けました。

 

 

退職後、お手紙を出したら

だいぶ経ってから

息子さんから返事が来ました。

お体を悪くされて息子さんと同居を始めたこと、

お礼が遅くなったことへのお詫びと、感謝の気持ちが書かれていました。

その息子さんも立派な人だとさらに感激しました。

 

 

もうずっと前のことなので

今はどうされているか分かりません。

ただ、茹でたトウモロコシを見ると

時々ふっと、その生徒さんの笑顔を思い出すんです。

 

そして自分も

その生徒さんのような人になりたいと思うんです。